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待宵草の薄暮日記

今は趣味三昧の気ままなひとり暮らし。 覚悟をもって毅然と、でも時には誰かのために熱くなる、そんな日々の徒然を綴っています。

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夜の薬局・・・追想15

在宅ホスピスでは、外来診療と同じように、訪問医が書いた処方箋を持って薬局に行き薬を受け取る。そこに書かれた様々な種類の薬の中には、疼痛緩和のためのオプソやオキシコンチン、デュロテップパッチなど麻薬が含まれているので、薬剤師は当然病人が末期のがんであることは見て取れるだろう。

私は利便性の面から、自宅近くの駅から少し離れたスーパーの向かいにあって、比較的遅くまで開いている処方箋薬局を利用していた。仕事を終えて疲れた体と心を引きずりながら薬局にたどり着くと、そこだけ蛍光灯の光が白く明るい。その無機質な感じが私にはちょうど良かった。

薬剤師は何人かいたが、私の姿を見ると必ず白衣を着た初老の主が出てきた。処方箋を手渡し、長椅子に腰掛ける。

毎週夜の閉店間際に、暗い顔をして入ってきて劇薬を抱えて言葉少なに帰っていく、一人で病人を看ながら働く私は、この店でどんなふうに映るのだろうか・・・気の毒そうに腫れ物に触るような視線を避けて目を伏せる。

別室で主は調剤していた。しばらく待つと名前が呼ばれてカウンターに行く。薬の説明以外、余計な言葉は交わさない。でもその無表情な眼鏡の奥にある、昔気質できっぱりした職業的な律儀さは十分伝わってきた。寡黙もまた救いだった。

薬を受け取り、白い灯りを背にして暗がりの中、家路を急いだ。

(2006年12月)
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